コラム⑨ 単独型・簡易型・総合型DCの違いと選び方について

企業型確定拠出年金(DC)は、企業が従業員の老後資産形成を支援する制度として広く活用されています。これまで主に大企業で導入されてきましたが、近年では中小企業にも対応可能な選択肢が整いつつあり、福利厚生の一環として注目が高まっています。

企業型DCには、企業の規模や運営体制に応じて複数の導入形態があります。

最も基本的な形が「単独型DC」で、これは1社が独自に制度を設計・運営する方式です。主に大企業で採用されており、掛金の設定や運用商品の選定、投資教育の方針などを自社のニーズに合わせて柔軟に構築できます。ただし、制度設計や事務手続きの負担が大きく、専門的な対応が求められる点が特徴です。

一方で、中小企業向けに設けられたのが「簡易型DC」です。これは制度設計を簡素化し、導入のハードルを下げることを目的とした仕組みで、掛金の上限が低く、運営の自由度も限られていました。結果として、企業側の選択肢が狭く、従業員にとっても資産形成効果が限定的であったため、導入件数は伸び悩みました。この制度は2025年に廃止される予定です。

その代替として注目されているのが「総合型DC」です。これは複数の企業が共同で企業型DC制度を利用する形態で、業界団体や運営管理機関が制度設計・運営を一括して担います。企業側の事務負担が軽減されるだけでなく、運営コストの分散や制度の信頼性向上にもつながります。中小企業でも企業年金制度を導入しやすくなるため、従業員の老後資産形成支援や人材定着施策として有効な選択肢となっています。

企業型DCの選択肢が広がることで、企業規模にかかわらず、従業員の未来に責任を持つ制度設計が可能になります。中小企業にとっても、持続可能な福利厚生の構築に向けた一歩となるでしょう。

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